水槽の水質悪化とは?原因とメカニズムから対策まで!
水槽の水質悪化とはどのような状態か?
なぜ水質悪化は起こるのか?
バクテリアの減少でも水質悪化が起こる?
水槽の水質悪化を起こさない方法とは?
こんな水槽の水質悪化に関する疑問についてご紹介いたします。
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水槽の水質悪化とはどのような状態か?
水槽の水質悪化とは水中の浄化サイクルが正常に機能しないことによって起こる問題です。
目には見えませんが、水槽内では微生物の働きによって水質の浄化サイクルが形成されています。
その流れを簡単に説明しますと
まず従属栄養細菌の仲間である通性嫌気性バクテリアが有機物(熱帯魚の糞など)を0.45ミクロン以下に分解し水溶化します。
次に好気性バクテリアが高分子有機物を低分子有機物に分解します。
この過程でタンパク質やアミノ酸へと変化していきます。
アミノ酸などの低分子有機物はアンモニアや二酸化炭素、水、リンなどの無機物にさらに分解されます。
このときに発生するアンモニアが生態にとっては非常に有毒な物質になります。
このアンモニアを除去するために必要なバクテリアが独立栄養細菌の仲間である硝化バクテリアのニトロソモナスです。
ニトロソモナスがアンモニアを亜硝酸塩に分解し、その亜硝酸塩を今度はニトロバクターという硝化バクテリアが硝酸塩に変化させます。
硝酸塩はバクテリアの働きによってさらに分解が進み窒素へと変わっていきます。
植物は硝酸態窒素のみしか根から吸収して利用できないため、窒素固定菌によって植物が吸収できるものへと変化していきます。
その後、硝酸態窒素は水草などに吸収されていきます。
これが水槽内で起きている水質浄化の仕組みです。
この水質浄化のサイクルの中でどこか1箇所でも上手く機能していないと浄化サイクルのバランスが崩れて物質の過多が起こります。
その状態が水質悪化です。
なぜ水質悪化は起こるのか?
なぜ水質悪化が起こるのか?
その仕組みを順番に考えてみましょう。
水質浄化サイクルの中で最初の好気性バクテリアが高分子有機物を低分子有機物に分解する過程において好気性バクテリアの数が少ないと有機物がすぐに分解されずに腐敗が始まります。
熱帯魚の死骸の放置などをすると腐敗臭とともに水が白く濁ったり、ふわふわしたものが浮遊するような状態となります。
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次に独立栄養細菌の仲間である硝化バクテリアのニトロソモナスがアンモニアを餌として亜硝酸に分解していきますが、ここでもアンモニアの量とニトロソモナスのバランスが出来ていないとアンモニアが大量に検出されるようになり、生体はアンモニア中毒になってしまいます。
ニトロソモナスが順調に繁殖し、亜硝酸が作り出されると今度は亜硝酸を餌とするニトロバクターが増え始めます。
ニトロバクターは亜硝酸があって初めて増え始めるため、どうしても繁殖するまでにある程度の日数を必要とします。
その後順調にバクテリアが増え始めると硝酸塩が増えるようになります。
ここから先は水換えによって硝酸塩の量を減らすか、水草など植物が吸収するような環境を維持するしかありません。
どちらも不足気味だと硝酸塩が蓄積し、水質は酸性に傾き続けます。
ここまでの分解の過程それぞれに窒素やリンも生成されるためそれら物質も上手く処理しないとコケの発生につながってしまいます。
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特に分解過程の初期に発生するリンは珪藻類が好むため、茶色いコケが生えやすい環境になってしまいます。
このようにタンパク質過多、アンモニア過多、亜硝酸過多、硝酸塩過多、窒素やリンの過多全てがそれぞれに違った問題を引き起こす水質の悪化なのです。
有機物が増える原因として餌の与え過ぎ、餌の食べ残しの放置、生体の糞の蓄積、枯れた水草の放置などが挙げられます。
そのような問題に水換え不足や植物の働き不足、数不足などが重なるとさらに水質の悪化は早まります。
バクテリアの減少でも水質悪化が起こる?
濾過バクテリアの減少でももちろん水質悪化は起こります。
良くある話に「何も変えていないのに急に水質が不安定になった。」などという時には濾過バクテリアの減少が疑われます。
ニトロソモナスやニトロバクターなどの濾過バクテリアは目に見えないため死滅や減少してしまっていることに気がつかないことが多いものです。
濾過バクテリアも生きているため、ちょっとした間違いでダメージを受けてしまうこともあります。
- 水換え時の水温差が激しい
- 水道水の塩素(カルキ)を除去していない
- 濾過フィルターの掃除の仕方を間違っている
- 高水温による酸欠
このような事で濾過バクテリアはダメージを受けてしまいます。
掃除後や水換え後に水面に油膜が出来るような時にはバクテリアの死滅や減少が疑われます。
今一度掃除方法や水換え方法が正しいか確認してみましょう。
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水槽の水質悪化を起こさない方法とは?
水槽の水質悪化が起こる原因がわかってくると水質悪化を起こさない方法も自ずと見えてくるとは思います。
今一度、水質悪化を起こさない方法をおさらいしてみましょう。
水質悪化の根源でもある有機物を増やさないことがまずは大前提となります。
- 生体の過密飼育をしない。
- 餌を与え過ぎない。
- 食べ残しの餌や糞はこまめに掃除する。
溜まってしまった有害物質を即座に除去・分解するためには
- 濾過バクテリアの繁殖を邪魔しない。
- 植物(水草)を多めに入れて元気に育てる。
- 適切な頻度と方法で水換えを行う。
これらが水槽の水質悪化を起こさない方法です。
生体の数が増えればその数に比例して排泄物も増えます。
よって水は汚れやすくなります。
水槽飼育ではその水槽サイズに合わせた飼育適正数というものがなんとなく定められています。
飼育適正数を大きく外れたような過密飼育は水質悪化を早めますので、なるべく避けるようにしましょう。
餌の与え過ぎもまた水を汚す大きな要因となっています。
飼育者としては適正と思っている餌の量が実は多すぎるということも結構ある話です。
お気に入りのショップに顔を出した時や知り合いのアクアリストに話を聞くような機会がある時に餌の量などの話も聞いてみると意外な発見があるかもしれません。
餌の食べ残しや糞の蓄積が見られたらこまめに排出しましょう。
プロホースなどの掃除用具を使う事で手軽に排出することが可能です。
水質悪化の根源を溜めないことが全ての水質悪化を防ぐ一番の方法です。
水換えや掃除を行う際に濾過バクテリアの繁殖を妨げるようなことをしないようにすることも大切です。
いくらこまめに水換えを行っても方法を間違っていたら濾過バクテリアにダメージを与えてしまいます。
その結果、いつまでも生物濾過が機能せずに水質悪化しやすい環境が続いてしまいます。
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水草や浮き草を多めに入れて窒素やリンをしっかり減らすことも綺麗な水を保つ秘訣です。
水槽内に自然の環境を再現してあげましょう。
水槽の水質悪化まとめ
- 水質悪化とは水中の浄化サイクルが正常に機能しない状態
- 濾過バクテリアが繁殖する前に有機物が増えると水質が悪化しやすい
- 餌の食べ残しや生体の糞はこまめに排出する
- 水槽立ち上げ時は濾過バクテリアが少ないので生体の数、餌の量は抑えたほうが良い
- 水換え方法を間違えると濾過バクテリアがダメージを受けてしまい、いつまでも水質が安定しない
今回は水槽の水質悪化に関する疑問についてご紹介しました。皆様の水槽管理の参考にしていただけると幸いです。
長期間水換えのいらない水に