水槽の藻・コケ対策

茶ゴケ発生の原因と除去・対策 ろ過バクテリアと水質の関係

2019年11月11日

茶ゴケ発生の原因と除去・対策 ろ過バクテリアと水質の関係

ガラス面に付着する茶ゴケ

水槽に蔓延る茶色いコケ「茶ゴケ」。

この茶色いコケが現れると綺麗な水槽が台無しになってしまうものです。

掃除をしてもまたすぐに蔓延る茶ゴケ。

この茶ゴケをどうにか除去したいと考える人は多いでしょう。

そんな茶ゴケの発生原因や除去・対策方法をご紹介いたします。

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生物濾過と茶ゴケ発生の関係

アクアリウムにおける茶ゴケの発生原因は?と聞かれると多くの方が生物濾過が立ち上がっていない、水ができていないと答えます。

勿論、私もこのような質問をされれば同じように答えるでしょう。

それは、この答えが間違いではないからです。

しかし水が出来上がった。水槽が立ち上がった。などという考え方には人により大きな差があるのも事実です。

その判断方法となるとアンモニア、亜硝酸濃度の数値にて判断をするとなりますが、ここに大きな落とし穴というか誤解を生じさせる要因が隠れています。

この考え方からすると初心者はアンモニアや亜硝酸数値が下がりだせば水質が安定して茶ゴケは無くなると考えますが、実際はそうではなく一行に茶ゴケが無くならないという問題を聞くことがあります。

その理由は生物濾過が安定したと考える時期に一昔前と今では違いがあるからなのです。

一昔前、熱帯魚飼育が注目されていた時代の水質の安定とは熱帯魚が死なない程度の水づくりでした。

よって熱帯魚などに致命傷となるアンモニアや亜硝酸数値が下がればそれで水は立ち上がったと判断されました。

しかし水草育成などの場合は少々判断時期に差があり、さらに時期を待ってはじめて水が立ち上がったと判断します。

その熱帯魚で言う水の立ち上がりと水草育成で言う水の立ち上がりの差で誤解が生じてしまい、茶ゴケの問題が多く発生してしまうのです。

ここからは少々長くなりますがその仕組みを詳しく説明いたします。

茶ゴケ発生の原因 濾過バクテリアと水質の関係

水草に付着する茶ゴケ

濾過バクテリアとは非常に小さく数ミクロンほどの大きさの単細胞生物で、水槽内では水草の枯葉や熱帯魚の糞などを分解し水質を保つ働きをしています。

濾過バクテリアには大きく分けて従属栄養細菌と独立栄養細菌があります。

まず従属栄養細菌の仲間である通性嫌気性バクテリアが有機物(熱帯魚の糞など)を0.45ミクロン以下に分解し水溶化します。

この活動には酸素は必要ありませんのでエアレーション等はなくても問題ありません。

次に好気性バクテリアが高分子有機物を低分子有機物に分解します。

この活動には酸素が必要となりますのでエアレーションなどが効果的となります。

アミノ酸などの低分子有機物はアンモニアや二酸化炭素、水、リンなどの無機物にさらに分解されます。

このときに発生するアンモニアが生態にとっては非常に有毒な物質になります。

ウォーターバコパに付着する茶ゴケ

このアンモニアを除去するために必要なバクテリアが独立栄養細菌の仲間である硝化バクテリアのニトロソモナスです。

ニトロソモナスがアンモニアを亜硝酸塩に分解し、その亜硝酸塩を今度はニトロバクターという硝化バクテリアが硝酸塩に変化させます。

硝酸塩は水草やコケの栄養となり吸収されますが、水草などの吸収量よりも多くなることを防ぐために水換えを行い水槽内から排出する作業が必要となってきます。

ここまでがアクアリウムでよくある説明ですが、ここから先が茶ゴケ発生のメカニズムに大きな影響を与えます。

ただ今までは茶ゴケに対しての説明ではなく、水槽のなかで起きる水質変化を簡単に説明するのが目的なため、この先をあまり説明したサイトや文章がなかったのでしょう。

よくよく考えてください。園芸などで植物の肥料などを扱われている方などは気づかれるとおもいますが、植物の栄養といえば窒素、リン、カリウムです。

硝酸塩なんてあまり聞かない名前のはずですが、アクアリウムでは「硝酸塩を水草が吸収して」となっています。

土壌中の無機窒素は、アンモニア態窒素、亜硝酸態窒素、硝酸態窒素の3つの形で存在しており、有機物が分解されるとまずアンモニア態窒素が生成され、土壌中の硝酸菌の作用で亜硝酸態窒素を経て硝酸態窒素にまで変換されます。

植物は硝酸態窒素のみしか根から吸収して利用できないため、窒素固定菌がいない環境では生育できないとされており、これを補うために窒素肥料の中には硝酸態窒素が大量に含まれています。これを窒素と呼んでいるのです。

水草に付着する茶ゴケ

窒素は自然界において空気中にも水中にもどこにでも存在する物質とされていますが、生体は空気中の窒素はほとんど効率よく利用できないとされています。

よっていろいろなバクテリアの働きによって返還された窒素をうまく取り入れているのですが、そんな専門用語を一般の人に説明しても混乱を招くだけですので商品などでは窒素として表記しているのです。

ちなみに私も混乱する一般の方一員です。

実は硝酸塩はバクテリアの働きによってさらに分解が進み窒素へと変わっていきます。

この窒素を養分として茶ゴケが発生していきます。

ここでいうバクテリアの働きとは水槽内で常に脱窒作用が行われていて窒素が増え続けているという意味ではなく、植物や茶ゴケが吸収する際に硝酸塩を使用し窒素へ返還されていると捉えてください。

よって水槽の中でも茶ゴケは立ち上げてすぐに発生するのではなく、しばらくしてから発生するはずです。

このコケが発生しだすと色々なサイトなどで調べた方はアンモニア濃度や亜硝酸濃度、硝酸塩濃度などを測定しますが数値は低い、なのになんでとわからなくなってしまい挫折されてしまう方が多いのも事実です。

この状態では水草育成においては水が立ち上がったとは言わずさらに先に進める必要があります。

水槽内では時間の経過とともにさらなる生態系ができあがっていき、今度は植物性プランクトンの働きによって硝酸塩(窒素)は消化されていきます。

水槽内で発生した硝酸塩は水草や植物性プランクトンによって利用されるのが正常ですが、これらの機能がしっかりできていないと飽和した硝酸塩を茶ゴケが利用してしまうということにつながります。

※(茶苔も珪藻と呼ばれる植物性プランクトンの一種ですが、ここでは分けて説明するためここでいう植物性プランクトンと珪藻とは別の種を意味します)

植物性プランクトンが増え始めると茶ゴケは徐々に減っていき水質が安定していきます。

ただ植物性プランクトンが増えるためには適度な光と二酸化炭素が必要になりますので蛍光灯の点灯もこのころには重要になってきます。

植物性プランクトンが増え始めると今度は動物性プランクトンが増え始め、植物性プランクトンを捕食します。

このようなメカニズムができると水に輝きがではじめてきます。

この状態まで持っていくことを水草育成においては水を立ち上げるといい、ここまでくると水槽内にしっかりとした生態系ができるため、茶苔の再発は無くなります。

このサイクルが出来上がる前に硝酸塩が増えすぎると次のステップに進めなくなってしまうのです。

一般的に硝酸塩はアンモニアや亜硝酸塩よりは毒性が低いものの、濃度が30ppmに達すると生長の阻害や免疫系の阻害を起こすことがあり、水棲生物に悪影響を及ぼすとされています。

そのようなときは水換えなどによって環境改善をしてあげることが重要となりますが、水道の水などを直接投入するとせっかくできあがりはじめた生態系にダメージを与えてしまうことがありますので気をつけてください。

水道水には塩素が含まれており消毒作用があることは知られていることです。

屋外などの池などで見られる生態系も同じで水を張った当初は茶ゴケに見舞われ水は濁っているはずですが、数カ月経つと生態系ができあがり綺麗な澄んだ池になり植物なども綺麗に茂っている池になっているはずです。

ただ過剰な生体投入された池ではこのような状態はなかなか見ることはできませんのであくまでもビオトープという考え方ととってください。

茶ゴケ対策

非常に長くなってしまいましたが発生原因がつかめたところで今後は対策をまとめていきます。

まずは茶ゴケの発生原因である硝酸塩の発生を抑えるため根源である生体の数は少なめに抑えることです。

生態系ができあがっていないうちに生体を増やしてしまうと糞が増え、その結果硝酸塩が増えてしまいます。

最悪途中の機能が低下してしまえばアンモニアや亜硝酸の増加にもつながってしまいます。

各種バクテリアやプランクトンの活動を妨げないように水換えの頻度や方法に気をつける。水道水の直接投入などは論外です。

水換えの考え方は活動が間に合わないバクテリアなどの手助けをするのが目的で過剰にたまってしまった物質を排除することを目的とし、その分減ってしまった水を補うという考えのもと行ってください。

植物性プランクトンの活動を活発にするためには適度な蛍光灯の点灯も管理してください。

最後にちょっと話はそれますが、今回のメカニズムを理解していただいたことにより水草の肥料には園芸用の肥料を利用できないことも覚えておいてください。

水槽内では必要以上に硝酸態窒素が生成されていますので園芸用の肥料を使うとさらに硝酸態窒素が増えコケの発生につながってしまいます。

園芸用に窒素が含まれる理由は水槽内と違い、熱帯魚などの糞などが陸上で溜まることはほとんどないので陸上の植物には硝酸態窒素も不足してしまうのです。

茶ゴケの除去

茶ゴケの対策方法とは別に今増えてしまった茶ゴケをひと先ずどうにかしたい。

そのようなときには人為的に掃除を行うかコケ取生体の力を借ります。

さらには茶ゴケ発生のメカニズムから考えられた茶ゴケ対策薬品などもありますので使用してみるのも一つの方法でしょう。

茶ゴケの発生メカニズムを理解し、今後の水質管理に生かしつつ、今発生してしまっている茶ゴケを除去できれば今後の発生は確実に抑えられるはずです。

バクテリアやプランクトンの話になるとどうしても画像で紹介するほどの設備が整っておりません。

その結果茶ゴケに見舞われた水草の画像を並べてしまいました。・・・結果、逆に見苦しいページになってしまい申し訳ありません。(汗

今回は茶ゴケ発生のメカニズムと濾過バクテリアの関係についてご紹介しました。皆様のアクアリウムライフの参考にしていただけると幸いです。

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